タオルと川が繋がっている

北欧のホテルに泊まった時のこと
“もしあなたが使わなかったタオルがあれば、そのままにしておいて下さい。毎日何千トンもの水が、洗濯のために使われます。洗剤も使われます。自然を守るため、洗濯しなくてもいいものはそのままにしていただけますでしょうか。ありがとうございます”
というバスルームにあった案内に衝撃を受けた。(何ヶ国語かで書かれていた)
日本のホテルでこんなこと書いたら宿泊客に怒られるよ、と思ったのは時が20世紀末、大消費時代だったからだ。
エコ、という言葉は出てきていたが今ほど意識は高くない時代。
かく言う私も、仕事とはいえホテルに泊まった時くらい贅沢にタオルを使いたい!と思っていた。
洗顔用、シャワー用、翌朝用、と使ってはバスタブへ使ってはバスタブへ。(使ったタオルをバスタブへ放り込んだりバスタブの縁に掛けたりするのは 使いました洗濯して下さい、という世界共通のお約束ごと)
それで贅沢気分を味わうことに仕事中の小さな幸せを感じていたが、件の案内に、ええ~!?タオル消費節約~??と思わず顔が渋くなった。
でも環境を守るのは大事。
自分のプチ贅沢も大切。
そこで、今まで1泊3枚使っていたタオルを2枚にして 心の中で折り合いをつけた。
その少しあと。
ドイツの小さな村に泊まった時のことである。
洗面所の鏡の横に、ティッシュより強い素材で1枚ずつ引っ張ると切れる形状の紙がぶら下がっており、
「口紅はこれで拭き取って!」と独語、英語、仏語で書いてあった。
その下に小さく
“あなたが口紅を落とすのにタオルを使うとそのタオルを洗うための水がドイツ国内で1日どれくらいになるか想像して下さい” とあった。
そうなのだ。
どうやら大消費時代に乗っかっている場合ではないらしい。
地球環境を守るための活動は、ヨーロッパはじめ海外ではとっくに始まっているのだった。
その後、1ホテル1枚だけタオルを使う、ということがすんなりマイルールになった。