ゾウの親子

elephant
Make up

20世紀末添乗員だった頃、一度だけアフリカのサファリに行った。初めてのところはドキドキするが、お客様には「初めてなんです〜」と言えないところが添乗員の宿命!?当時、まだスマホもネットもなく(ネットはあったかもしれないが使う、という段ではなかった)情報については以前のレポートが頼みの綱だった。

そのツアーはビクトリアフォールズとサファリがメインで、南アフリカ共和国からジンバブエ、ボツワナ、と巡るツアー。南アフリカ共和国までは香港乗継で待ち合い時間含め約20時間。動物たちは遠いところにいるのだ。
ビクトリアフォールズはナイアガラ、イグアスと共に世界三大瀑布の一つ。「あと二つは知っとったけどな、この滝の名前は出てけーへんかってん。江戸バクフかと思ったわ〜」「私もそれ思いました〜、今日はその江戸幕府見に行きますよ〜」と関西発ツアーならではのボケツッコミからの出発(笑)。ビクトリアの滝は、近くまで行けるわけではないけれど、バスを降りたらカッパを来て歩く。歩くにつれカッパの意味をなさないほどシブキ、というより豪雨。濡れるなんてもんじゃありませんよ、と言っていたのに「こんなにすごいとは思わんかった。。。」そうでしょうそうでしょう。何事も体験しないとわからないところが旅行の醍醐味です。

サファリに行く前にも動物には遭遇していた。初めてゾウを見た時のお客さまの感激と言ったら!目が星になるくらい輝いていてバスの中からカメラを向けておられたのに、その後三度目ゾウに遭う時にはもはやハイハイゾウさんここにもいらしたのね、くらい感激は薄まっていた。(早い)


ボートで川下りをしながら動物を間近で見るのも迫力があった。現地ガイド氏はどんな動物がどの辺りにいるか熟知しているので命預けました状態。カバやワニは獰猛なので近寄らないよう避けながら案内してくれた。お客さまが、百獣の王はやはりライオンか?と尋ねると意外なことにカバだと言う。泳ぎも速く獰猛なので油断大敵、容赦ならないらしい。ボートをひっくり返されなくてよかった。。。


サファリでは専用の車に乗り換える。今は4WDの日本車だが、当時はもう少し古い型だったような。ドアは外してあり屋根も後でつけたもの。ドアの代わりに支えの棒があるだけなのでまさに人間が檻に入って移動している、の図。ボツワナのチョベ国立公園のサファリは動物の生活や生態を邪魔しないよう、でも観光客のニーズに応えるが如く熟練のガイド氏が時間の限り案内してくれる。それをゲームドライブという。バブーン(ヒヒ)、インパラ、クドゥ、キリン、などなど初めましての動物もいれば鳥は350種もいるらしく、時間が経つにつれアフリカの大地は人間の悩みなど小さい事だと教えてくれるようだった。お腹いっぱいになっているライオンはおとなしいから、とかなり近寄った。そんなに寄りますか?というくらい近づいたのである。ここでライオンが満腹でなかったら襲われるのは一番端にいる私。。。うわぁ、そんなに寄らないで〜。一瞬冷や汗が出たがライオンは本当に満腹だったらしく、私たちを一瞥すると寝てしまった。彼らからすれば私たちは動物と認められていないようにも思えた。

夕方、今日はゾウの水浴びが見れるかな?とガイド氏が連れて行ってくれたところで私たちは言葉を失った。何十頭ものゾウが川を目指して歩いている。先を行っていた集団は水浴びを始めていた。とその時、「パオーンパオーン」というゾウの鳴き声が聞こえた。その声が子ゾウであることは私たちにもわかったがずっと鳴いている。泣いていると言った方が正しいかもしれない。子ゾウは「パオーンパオーン」と泣きながら走っていた。大人のゾウの間をあれ?このゾウじゃない、このゾウも違う、と言わんばかりの走り方と泣き方。そう、まるで迷子になった子どもが お母さーん、と言って泣いて走っているように。そのうち大人のゾウらしき声で「バオーンバオーン」という声が聞こえてきた。子ゾウはその声を目指して走っていく。「パオーンパオーン。バオーン。」母ゾウ(推定)も足を早めている。「パオーンパオーン。バオーン。」ついに会えた。やはり親子だったらしく抱きついている。その光景は人間と何ら変わりない。通訳も説明も不要だった。そしてその光景にカメラを向ける人は誰もいなかった。夕方の乾いた風が、ゲームオーバーを告げているようだった。

Yasuko

*人が好き。誰かの笑顔のお手伝いが何より好き。なのに *「母親失格だ!」という息子からの言葉で 彼が不登校になった時も十分寄り添えてなかったことを思い知る。...

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