大人こそ学びのプロであろう!

新学期。
青空と桜吹雪、菜の花畑、飛行機雲。
暖かい風に触れて気持ちも上向き。誰もがわくわくの季節。
外に出て感じる春もあれば、心で感じる春もある。
新しいものとの出会いは、いつだってドキドキの高揚感がマスト。
たまらなく好きな季節。
子どもたちの小さな胸の中いっぱいに広がる未知へのわくわく、好奇心。
内に秘めておけずに、外に溢れてしまったと言わんばかりのキラキラな瞳には、未来への希望が見て取れる。
ああ、なんて素晴らしい季節。
そんな子どもたちへ最初に贈るのは、その瞳に負けないほどの美しい言葉との出会い。
“詩や物語”のプレゼント。
子どもは学びのプロでしょう。どんな風に吸収していくのか見てみたくありませんか??
さあ、大人も負けていられない。学ぶ姿勢の真剣勝負!!
子どもたちの純粋な視点から、あなたは何を感じるでしょうか。
春。
外に出たら感じる、暖かい日の光。
緑が芽吹き、色とりどりの花を咲かせる。
その花のどれもが、自らの美しさを誇っている。
土はふかふか、風もそよそよ、暖かい春のにおいにつられ、虫たちも顔を出す。
その空気をいっぱいに感じ、誰に何かを教えられなくとも、子どもたちの心はそれだけで豊かに思いを馳せる。
その肌感覚と感情に、たしかな輪郭・形を与えるのが、言葉だ。
不思議な世界を旅することができる物語との出会いは、子どもたちの脳に革命を起こす。
ただ物語を読んで「不思議だった。」「面白かった。」で終わるのはもったいない。
じっくりゆっくり文章の一言一句を噛みしめていくことで深い味わいが増す。
この学びを体験した子どもたちは、作品の虜になるのだ。
じゃあ、何がそんなに作品の世界にどっぷりと浸らせるのか。
それは、時間と好奇心。
何度も何度も時間をかけて繰り返し文章を読み、触れ合うことで、子どもたちは毎回新しい気付きを得る。
美しい言葉を脳に刻み込む作業は、そのまま美しい世界をイメージとして濃くはっきりと作り上げる。
音読とはまさにこの作業の最たるもの。
毎日の音読の宿題を、適当に済ましていたら、実は子どもの脳にとっては、もったいないことをしてしまっている。
逆を言えば、音読をきちんと一回聞くことで、子どもの脳に素晴らしい財産を残せるのだ。
お夕飯の準備をしながらでもいい。お得ではないか。
さて、文章とじっくり触れ合うと見えてくるものがある。
それは,この作品を書いた時の作者の思いだ。
作者はその文章の至る所に気持ちを残している。
時には、登場人物の言動、表情、身なりから。
時には,周りの景色の表現から。
時には,たった一文字のひらがなから・・・。
「白い帽子」という作品をご存じの方も多いだろう。
“あまんきみこ”さんの代表作だ。
そこには様々な色表現が出てくる。
『運転席から取り出したのは、あの夏みかんです。まるで、あたたかい日の光をそのままそめつけたような、見事な色でした。』
大人でもこの文章に触れたら、お日様のように心の中の温度が上がり、ピカピカと光りを放つのを感じる人もいるだろう。
子どもたちも同じく、夏みかんの中に、本当にお日様を見つけるのだ。
それだけではない。【あの】という表現。
ただの夏みかんではない。【あの夏みかん】なのだ。
主人公のお母さんが、においまで届けることができるようにと、速達で送った【あの夏みかん】だ。
お母さんの思いごと届いた【あの夏みかん】を、今度は帽子の中にちょうが入っていると思っている男の子への思いとして、そっと帽子の中に入れたのだ。
【あの】というひらがな二文字によって、子どもたちはページをパラパラとめくっては戻り、文章を確認し、物語の隅々を味わいつくそうと動き出す。
純粋に学びを楽しむ意欲。私たちも見習うところが大いにある。
そして、着眼点は一人一人違う。
みんなで学ぶと、そこがまた、面白い。
大人になると好奇心を忘れてしまうのだろうか。
いつからか,学ぶことへの意欲が低下するのだろうか。
いやいや,そんなことはない。
『学ぶことは楽しい!!』という感情は、いつだって感じることができる。
私たちの脳はすごいのだ。
キラキラとわくわくのエネルギーをもっていたら、どんなことだって可能だ。
可能性は無限大だ。
大人こそ、笑われるくらいに大きな大きな夢を見よう。 大人こそ、間違えたり転んだり、泥臭くてかっこ悪い姿を見せながら、学ぶことを心から楽しもう!!
子どもは学ぶ姿勢のプロでしょう。
いやいや、大人こそ、学びを楽しむプロであろう。
その姿を未来を担う子どもたちが見て、そっと背中を追ってくれるように。